タイムリミットが迫っているこの状況。
そんな時、偶然ラジオから流れてきた曲が、
レディー・ガガの「The Edge Of Glory」だった。
【動画:音が出ます】偶然に流れた「The Edge Of Glory」もお聴きください(笑)
「いやぁ、もう良くここまで来た。栄光の果て(The Edge Of Glory)なんじゃないか。」
夕日をチラチラと見る。
まだ引き返すことができる。
そして、The Edge Of Gloryの曲が終わるくらいのカーブの先には・・・・
もう、その先へと続く道が確認できないでいた。
さらに、今までにはないアップダウンの衝撃に、Jeepも悲鳴をあげだした。
もう、ここで決断の時なんだ。
いくら保険がフルカバレッジのレンタカーと言えども、
車に何かあっては元も子もない。
何としてでも戻らなければならない。
岩肌が見えた悪路を、強引にUターンするために、ギヤをバックに入れた。
車の底を草なのか、枝なのかが引きずる音。
なんとか、車は来た道の方向に転換することができた。
「勢いだけで、こんなところまでよく来たものだ・・・。」
自分に納得するしかなかった。
ギヤをドライブにいれて、 走り出そうとした、
まさにその時だった・・・。
前方から手前に向かって(タイヤの跡があります)Uターンした、まさにココでした!
〜ここが私のアナザースカイ(another sky)「ナバホ」〜って気分笑
Uターンした、 まさに、
その場所に・・・・
小さな砂の丘があった!!!!!
急いで車から下り、その小さな砂の丘を確認した。
ある、
ある、
ある!!!!!!
【動画:音が出ます】近づいていくと赤色の結晶がわかると思います。風も強く周りには何もない・・・
目をこらすと、小さくとも力強く輝く、
深紅のかけらがそこにあった。
以前チェコのパイロープガーネット、別名ボヘミアンガーネットの鉱山に
行った時にも似たような感じで見つけたことを思い出した。
蟻塚ではないが、細かい砂利の中に深紅のガーネットが光っていたのだ。
【参考】2016年にチェコのボヘミアン(パイロープ)ガーネットの鉱山に行った時の写真
目の前に現れた小さな砂の丘に自然とガッツポーズが出た。
全身に鳥肌がたった。
赤い色は、数多いガーネットの種類の中でも
「パイロープ」と呼ばれるガーネットに属する。
このパイロープガーネットは通常結晶になることはなく、
写真のような、塊状・かけらの状態なのがほとんどだ。
さらに、この地のナバホ産出のパイロープガーネットは、
クロムの含有量が一般的なパイロープに比べて多いことから、
まるでルビーのような真っ赤な色合いとなるため、
別名をアリゾナルビー(あだ名)とも言われる。
あくまで色の話なのでルビー(コランダム)とは全くの別物だ。
どちらかというと、あだ名というならばやはり、
アントヒルガーネットだろう。
クロムパイロープ”アントヒルガーネット”などと言われることが多い。
クロムパイロープとは先ほど説明した通りクロムの含有量が
多いということで、クロム。
そしてアントヒルというのは、言うまでもなく今回の目的でもある蟻塚である。
名前の由来は、アリが巣(蟻塚)を作る時に
その巣の中の不要な石(パイロープ)を外へ運び出し、
巣穴の周りにガーネットが散らばっていたから言われたり、
蟻が運べるほど小さな結晶にしかならない石、という例えからそう呼ばれるのだろう。
では実際に、どんなものか見てこようじゃないか。
というのが今回の旅の着想であった。
まさか本当にガーネットが存在する蟻塚が見つかるとは思いもしなかった。
しかし、実際にはアリは一匹も見当たらなかった。
けれど、この蟻塚らしきちいさな砂の丘にパイロープガーネットがあることは、
まぎれもない事実だった。
「目の前にある。本当だったんだ!!」
動画で見てもらっても分かる通り、周りには点々と植物があるものの、
このような蟻塚、小さな砂だけの丘は見回しても1つのみだ。
吹きさらされた砂がちょうど集まって丘になったのか、
蟻塚に吹きさらされたガーネットが溜まったのか、
もしくは蟻がガーネットを運んできたのか、真相はわからないが、
人間が作ったものではなさそうだ。
わざわざこんなところに1つだけ作る理由が全く見当たらないのだ。
後日談だが、専門家に写真を見てもらったところ、
この砂の丘は蟻塚であることは間違いないそうだ。
蟻塚の頂上に巣穴がないのでこの蟻塚は古くなったもので、
少し離れたところに別の蟻塚があるはずだと話してくれた。
ビュービューと強い風が吹く中、遠くで犬の鳴き声が聞こえてきた。
子供のようにはしゃぎ回り、夢中で写真を撮りまくる日本人。
しかしもう刻々と日没が迫っていた。
真っ暗になる前にこの悪路から早く脱出したほうが良さそうだ。
あっという間に陽が沈む。強い風で道の表情が行きとはまったく変わる。
もしかしたら、まだ蟻塚が周りにあるのではないかと思い、
周りを見渡しながら車を走らせた。
一ヶ所だけ蟻塚らしき砂だまりにガーネットを発見したが、
放し飼いの犬が吠えているのが見えたため、
車を降りて確認するは断念した。
暗くなる前になんとか無事に車はアスファルトの道路にたどり着いた。
そして、ナバホの名所でもある「モニュメントバレー」を見渡せる
本日の宿に着いた頃にはすっかり日も暮れて真っ暗になっていた。
右前方に見えるのがナバホでは有名な「モニュメントバレー」。本日のお宿はもうすぐ。